マザーバインズ長野醸造所
2018年3月 下高井郡高山村
「ワインには力がある」日本の農業をよみがえらせる力、地域文化を生み出し育む力、人々みなを幸せにする力、
建主の発する言葉を表現する敷地は北へ緩やかな傾斜があり隣地は林檎、プラム、葡萄の果樹園、眼下に善光寺平、遠景に北信五岳を望む雑草地でした。建主は10年来の計画を実現する為に全国を歩き、圃場調査を経て土質、敷地環境、営農条件の良さに加え、周辺環境に一目惚れで高山村での計画を決めました。醸造所の目的は醸造受託、醸造指導や検査を受け入れ小規模醸造者を育成すること、また内外から訪れる人に日本そして高山村の農業景観を身近に感じ価値を見出してもらいたいという事でした。
私たちは敷地と周囲との緩やかな境界線を生かし、農作業で日々周囲を行きかう人の意識が「建築」にとらわれず醸造所と農家や農村風景が緩やかにつながる関係性を探しはじめました。それを実現する方法としてなるべく切土盛土はせず建物配置は道路からの距離をとり搬入路の動線が農業車両の行き交う前面道路と交差しない位置に製造部門を設けました。また低いボリュームを地面の低い位置に製造エリアの高さが必要なボリュームを高い位置に配置し、丘陵地である敷地の勾配に大屋根の勾配を添わせました。
また交流エリアと製造エリアの中央に外的な要因を避ける目的で熟成倉庫と検査室を配置、同時に交流エリアと製造エリアの緩衝帯的役割を持たせました。交流エリアの開口からは農村風景を眺められると同時に周囲の景色を映しガラスもまた一つの風景としての役割を果たしています。
敷地全体の法面は工作物で固めず緩衝帯は元来の傾斜を生かし、周囲の植生や果樹に影響が出ない植物を植えました。また前面道路で農作業車の行き違いが出来ない狭さだった場所は誰もが使えるような待機場所として地域に開放しています。
写真:新澤 一平
共に
TOBEARCHITECT 香川翔勲
Detail
用途 | ワイン醸造及び研修施設 |
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概要 | 木造平屋建て |
所在地 | 下高井郡高山村 |
完成 | 2018年3月 |
設計 | ㈱スタジオアウラ+香川翔勲 |
施工 | 松本木材株式会社 |